おすすめの今月の1枚

   
大塚国際美術館スタッフが毎月おすすめの作品をご紹介。
絵画鑑賞をもっと身近に興味深く楽しんでいただけたら嬉しいです。
 

【今月の1枚】クラナッハ、ルーカス《回春の泉》

【今月の1枚】クラナッハ、ルーカス《回春の泉》
 
クラナッハは、1472年ドイツの都市、クローナハで生まれました。33歳の時に宮廷画家になりましたが、自立的な企業家でもありました。大きな工房を構えたほか、薬屋、ワイン屋、出版業、貸家業と多角経営で成功し、30年にわたって市の参事会員を務め、市長にも3度選ばれました。
クラナッハは、デューラーやグリューネバルトと同時代の、ドイツ・ルネサンスを代表する画家で、宗教画、神話画、肖像画のほか、ここにみるような風俗画的な主題も手掛けています。
 
クラナッハの作品で人気を集めているのは、少女のように華奢でどこか危うげな、それでいてしばしば妖しい色香のある数々のヴィーナス像ですが、本作もまた別の意味でクラナッハらしさが良く出た作品です。
画面中央では、水泳用のプールのような泉がありますが、泉を中心に、左側から右側へゆっくり目を移して見ていきましょう。
まず画面左には、若返りを願う老人で、ひとりでは歩けず担架に乗せられた者、夫におんぶされた者などが、この目的地(泉)を目指してやってきます。そして、このヴィーナスの立像のある泉に入ると・・・どうしたことでしょう!効果てきめん、あっという間にピチピチの女子に若返り。そう、これは“若返りの泉”なのです。
画面右では、女子たちと宴を楽しむ、これまた若返ったばかりの男たち。ダンスも盛り上がっているようです。ただし、この泉に入っているのはなぜか女性のみ。その理由は、当時のある文献によれば、男が若返るのは若い女性に接するが一番、だとか。またこの作品には、宗教的な意味も含まれているようです。水につかることを、一種の洗礼と考え、それによって若さを取り戻すだけでなく、それまでの罪障も洗い流すというのです。
 
もしも、この絵に見るような“若返りの泉”が現実にあったとしたら、それはもう人気殺到、間違いないでしょう。画家が楽しみながら本作を描いた様子も強く伝ってきます。
 
当館では、8月からのイベント『あやしい絵 名画の怪』が始まります。本作「回春の泉」はじめ、ほかにも怪しい、可笑しい、不思議、不気味な“怪画”をご紹介します。ぜひ、この夏は、大塚国際美術館で怪画鑑賞を楽しんでみませんか?

(文責:松浦 奈津子 2017年8月) 

 
 
 
クラナッハ、ルーカス《回春の泉》
《回春の泉》
クラナッハ、ルーカス(1472-1553)
ベルリン国立美術館、ベルリン、ドイツ
油彩、板/121×185㎝
1546年制作
※写真は大塚国際美術館の展示作品を撮影したものです※
 
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